講談社現代新書「食をめぐるほんとうの話」というアホ本

11月27日金曜日晴れ△
久しぶりに酒に関してえらいアホな本を読みました。(酒以外の他の記述については知りません)
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<「高級な大吟醸酒に添加物」のふしぎ
ある有名グルメ漫画では、日本酒のあるべき姿について次のように論じています

〈日本酒は本来、米と米麹と水だけで造られるべきものである。しかるに、日本の大手酒造メーカーは、添加物を大量に加えている。醸造用アルコール、醸造用糖類、酸味料、化学調味料等々。こうした添加物は安価であり、本来の日本酒に加えれば製造コストを大幅に下げられる。

だが、そうして造られた酒はべちゃべちゃして妙に甘っとろいだけで、日本酒本来の深みのある味わいがなくまったく美味しくない。でも酒造メーカーは、原料の量が同じなのに三倍の量の酒が造れてボロ儲けできる美味しい商売を覚えた結果、まともな日本酒を造ろうとはしなくなった〉

酒店の店頭で見ると、日本酒の中で純米酒の割合は非常に少なく、全体の1割もありません。これは本当にメーカーが〝ボロ儲け〟のために、血眼になって日本酒に混ぜ物を入れているためなのでしょうか。

確かに2リットルの紙パックに入った安い価格の日本酒の成分表を見ると、醸造用アルコールに醸造用糖類、酸味料など数種類の添加物が表示されています。混ぜ物ばかりだから価格が安いといわれれば、そうかなとも思えます。

ところが、実にふしぎなことがあるのです。

いわゆる大吟醸、吟醸とは、酒の仕込みに使う米を深く精米して不純物や雑味を極限までなくし、特別に手間をかけて造った高級な日本酒です。酒店では一番目立つ場所に、うやうやしく半透明の包装紙で包まれたビン入りで販売されています。高価な日本酒ですから、冒頭にご紹介した漫画のポリシーに従うなら当然、純米酒であるはず。

ところがさにあらず。醸造用アルコールが添加されているものが多いのです。白鶴大吟醸、菊正宗大吟醸、月桂冠大吟醸、久保田、越乃寒梅、八海山、吉乃川、黒松剣菱……有名銘柄の高級酒の多くが、醸造用アルコール添加。なぜわざわざ、それらを混ぜるのでしょうか? 純米酒のままで、純米酒を「売り」にしたほうが、より消費者の人気が高まるはずなのに……。

酒蔵は大吟醸という高価格の酒にまで安い添加物を加え、消費者をだましているのか? いや、何も消費者をだましているわけではありません。ラベルには堂々と醸造用アルコールを加えたと書いてあります。添加物を加えるのは、単にそれが安いからなのでしょうか?
 この問題について酒造会社が発言したことはなく、悪口をいわれっぱなしのままです。一向に実態がみえてきません。はたして真実は? >
p九〜十

<この問題について酒造会社が発言したことはなく、悪口をいわれっぱなしのままです。一向に実態がみえてきません。はたして真実は? >

この時点で、この著者三人のうち少なくともこの部分を書いている人間はど阿呆ということがわかります。
いろいろな蔵元が自分のところの酒については当然ですが発言しています。
そんなことはちょっと調べればわかることだし、記してある蔵元の一つでもいいから連絡して聞けば解決することです。
それをこのアホどもは下記のように結論付けています。

以下引用
<本書の序で触れた日本酒にも、同じことがいえると沼田さんはこう続けます。
「ひところ純米酒がもてはやされ、日本酒に米と米麹以外のものを入れるのは悪だ、邪道だと決めつけられました。でも、そんな単純な問題ではないんですよ。高価な銘酒なのに醸造用アルコールが添加されているお酒はたくさんあります。純米酒がもてはやされているのに、なぜあえてそんなことをするのでしょうか?
味を均一に調え、品質の変化を抑えるためです。大きな酒蔵は通年で大量出荷しなければなりません。いつも同じ品質です。何も加えなければ、瓶詰した後に発酵が進んで味が微妙に変わってしまいます。高級なうまい酒だからこそ、味と品質を保つために少量の醸造用アルコールを加えるのです。
お酒は蔵元のある地方で飲むのが最高といわれますね。遠くへ運ぶのに時間がかかったり、酒瓶のまわりの温度や日光などの環境が変わったりすると品質が変わってしまいます。
以前、別の店に勤めていた時、飛騨高山の蔵元で飲ませていただいたお酒がとても美味しかったので、一箱仕入れたことがありました。でも、クール便で東京に運んだだけで味が壊れていました。日本酒はそれくらい繊細です。
p二百六〜二百七

IMG_0114小さなことだが、<日本酒の成分表を見ると>と書き、最初から最後まで「醸造用アルコール」と書いているが、酒のラベルには普通は「醸造用アルコール」ではなく「醸造アルコール」と表記しているはずである。

<大きな酒蔵は通年で大量出荷しなければなりません。いつも同じ品質です。味を均一に調え、品質の変化を抑えるためです。大きな酒蔵は通年で大量出荷しなければなりません。いつも同じ品質です。>と書くが、大手の蔵元さんの四季醸造と大吟醸のアル添(醸造アルコール添加)は関係ない。大きな、小さいではない。小さな蔵元さんでも大吟醸は造っている。だいたい、大手の蔵元さんでも最高酒の大吟醸は冬に仕込むのがほとんであって、獺祭さんなど一部の蔵元さんのみ四季醸造にて純米大吟醸を造っている。そして、大手の蔵元だけでなく写真の初亀酒造さんの鑑評会出品酒など他の蔵元の最高酒の一つである鑑評会出品酒にはアル添酒がほとんどであるのがどうしてかを考えれば自ずと答えは出てくる。
大吟醸、吟醸における醸造アルコール添加の目的は、吟醸香成分が水よりアルコールに良く溶け込むため純米大吟より大吟の方が吟醸香が立ちやすくなるから出品酒には純米大吟醸より大吟醸が使われる。そして、大吟醸は純米大吟醸に比べて、味の切れが良いと言われている。つまり、酒質の安定の為ではなく純米大吟醸と違った酒のタイプとして設計されて造られるのが大吟醸である。

<瓶詰した後に発酵が進んで味が微妙に変わってしまいます。高級なうまい酒だからこそ、味と品質を保つために少量の醸造用アルコールを加えるのです。>

酒質の安定の為に火入れをすることはあっても、酒質の安定などという為に大吟醸にアル添をしている蔵元など今時ほとんどないだろう。
ましてや、「瓶詰した後に発酵が進んで味が微妙に変わってしまいます」だと。
生酒として流通させるのだとともかく、単にアル添、純米にかかわらず発酵を進まさないようにするのであれば、普通はアル添をするのではなく火入れをするだろうに。火生酒はアル添も純米もある。その生酒の酒質を安定させるために火入れをする。

<クール便で東京に運んだだけで味が壊れていました。日本酒はそれくらい繊細です。>

アホかと。
断言してもいいが、上槽が終わって絞ったばかりの酒を蔵元で利いた時とその酒を瓶詰にしてもらって持って帰って時間が経過した酒を飲んだときの違いだと絞ってから時間が経過することによっての味の差は出るのは確かだが、でなければ、流通させるための製品として瓶詰された酒が飛騨高山から東京にクール便で送られてきて、それを落ち着かせて利けば、蔵元で利いた時と東京で利いた時で味が違うなどということはありえない。

何度も書くが、酒質の安定のためだとアルコール添加より火入れするのが一般的だろうに。

阿部尚樹氏、上原万里子氏、中沢彰吾氏の三人のうちのだれがこのことについて書いているアホなのかわからないが、少なくともこの東京農大学食「すずしろ」の経営企画室長・沼田康弘氏はここまで自分の無知を曝して恥ずかしくはないのだろうか。恥ずかしくないんだろうな。な〜んも酒についての基本的な知識を得ようとしなかったから今時こんなアホなことを平気でほざいて己のアホさ、バカさを世間様に知らしめても平気なのだろう。

あの「大吟醸バガボンド」の著者と同レベルでんな。

講談社現代新書「食をめぐるほんとうの話」平成二十七年刊
著者
阿部 尚樹(あべ・なおき)東京農業大学応用生物科学部食品安全健康学科教授。北海道大学農学研究科博士前期課程修了。博士(農学)。共著に『サクセス管理栄養士講座 食べ物と健康2 食品衛生学』(第一出版)、『健康と栄養のための有機化学』(建帛社)など。
上原 万里子(うえはら・まりこ)東京農業大学応用生物科学部食品安全健康学科教授。東京農業大学農学研究科博士後期課程修了。農学博士。共著に『栄養科学イラストレイテッド―解剖生理学(改訂第2版)』(羊土社)、『サクセス管理栄養士講座 基礎栄養学(第3版)』(第一出版)など。
中沢 彰吾(なかざわ・しょうご)1956年生まれ。ノンフィクションライター。東京大学卒業後、1980年毎日放送(MBS)に入社し、アナウンサー、記者として勤務。2006年、身内の介護のために退社した後は、著述業に転身。近著に『中高年ブラック派遣』(講談社現代新書)など。

アホらし

バンブーさん来店。
二名様来店。
二名様来店。
Sさん来店。
Oさん来店。
Aさん来店。
二名様来店。
二名様来店。

ドンチャン。
一応記憶あり。
猿よりマシ。