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 ごまめの歯ぎしり メールマガジン版
  河野太郎の国会日記
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総理の靖国神社参拝に関して、いろいろなご意見があると思います
が、なぜ中国政府が総理の参拝に抗議するのか、その理由を知らず
に議論している方がいらっしゃるようです。
相手側の主張も知った上で、ぜひ議論して頂きたいと思います。

もともと靖国神社に日本の総理大臣が参拝することに対して、中国
政府から抗議や反発はありませんでした。三木武夫首相は在任中に
靖国神社に参拝していますし、昭和天皇も靖国神社に参拝されてい
ました。

1972年9月に、当時の田中角栄首相と大平正芳外相、二階堂進
官房長官が中国を訪れ、毛沢東主席や周恩来総理と会談し、日中共
同声明に署名して、日中国交正常化への第一歩を記しました。
その日中共同声明のなかで、日本は「過去において日本国が戦争を
通じて中国国民に重大な損害を与えたことについての責任を痛感し、
深く反省する」との立場を明確に文書にしました。当時の中国国
内には、日本に戦時賠償を求めよとの世論もありましたが、毛沢東
主席、周恩来総理をはじめとする中国の指導者は、戦争は日本国内
の一部の軍国主義者によって発動されたものであり、大多数の日本
国民も戦争の犠牲者であるとの認識を示して、戦争の被害者が同じ
戦争の被害者に賠償を求めることはできないとの立場を取りました。
日本側が戦争の責任をきちんと受け止めて反省していることを前
提に、共同声明では中国側が賠償を放棄することを明確にしました。
ここでいう一部の軍国主義者の象徴が、極東軍事裁判で戦争の指導
的責任を問われたA級戦犯です。
そのA級戦犯が、1978年に、靖国神社に他の戦没者と一緒に合
祀されてしまったことが、この靖国神社問題の発端です。
戦後、憲法上の政教分離の原則の下、靖国神社も一つの宗教法人に
なりました。そして、宗教法人に対して政府が介入することもでき
なくなったため、靖国神社の運営は全く政府とは別個のものとなっ
たのです。そして、靖国神社は宗教法人としての独自の判断で、A
級戦犯の合祀を行ったのです。
この合祀の後、昭和天皇は靖国神社への参拝を行われなくなりまし
た。

そして、1985年8月15日に中曽根首相が靖国神社に「公式参
拝」を行ったのをきっかけに、中国政府も日本政府に対し、首相、
外相、官房長官が靖国神社への参拝をしないよう求めるようになり
ました。つまり、日中共同声明の中で確認した、戦争と中国国民に
対する重大な損害に責任のある「一部の軍国主義者」が神として祀
られている場所に、その日中共同声明に責任のある首相、外相、官
房長官という役職にあるものが参拝することは、共同声明の合意に
反することになるという主張です。
1972年に日中共同声明に署名をしたのは田中角栄であり、大平
正芳でしたが、この二人は個人として署名したわけではなく、首相、
外相という日本を代表する役職として署名したわけですから、こ
の役職にある人物は、共同声明における合意事項を誠心誠意守るよ
う努力するべきだというのが中国側の主張です。つまり、首相を辞
めた田中さんが靖国神社に参拝するのは良いが、現に首相の役職に
ある小泉さんが靖国神社に参拝するのは、中国側から見れば、日中
の合意に反するということになります。

中国国民から見れば、本来多額の賠償を取るべきだったにもかかわ
らず、同じ戦争の被害者だからという中国指導部の主張に沿って賠
償を放棄したら、その責任を取るべき「一部の軍国主義者」が神と
して祀られてしまった。まあ、そのことは日本政府とは関係のない
一宗教法人の行為ですが、その宗教法人に首相が参拝すれば、共同
声明に合意した日本政府の代表が宗教法人の行為を追認したことに
なってしまいます。日本側が共同声明の合意をほごにするのならば、
こちら側も賠償放棄を取り消して、賠償を求めようではないか、
ということになってしまいます。だから、中国政府は、日本政府に
対し、A級戦犯が合祀されている靖国神社に、首相が参拝すること
は、日中間の合意を踏みにじる行為だから、やめてほしいと言って
くるのです。
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■編集:河野太郎
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